ゴーンの新弁護士:弘中惇一郎・異名の無罪請負人が語る事とは?
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)の新たな弁護人に就いた弘中惇一郎弁護士(73)が3月4日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見した。冒頭、司会から「カミソリ弘中」「無罪請負人」として紹介された弘中氏は1時間半近く質疑に答え、「一日も早く保釈されるようにしたい」「自らの切れ味を試したい」と最後コメントしたことで記者席は沸いた。ゴーン被告の保釈については、東京地裁が5日以降、判断を示すものとみられる。
Contents
ゴーンの新弁護人:弘中惇一郎氏
弘中 惇一郎(ひろなか じゅんいちろう、1945年10月16日 生まれ:73歳)は、日本の弁護士。元自由人権協会代表理事。東京大学法学部卒業(1968年)。
経歴は華々しい。クロロキン、クロラムフェニコール、日化工クロム職業病裁判(六価クロム)など多くの薬害事件を担当したほか、マクリーン事件などを担当。障害者郵便制度悪用事件で村木厚子氏の無罪を勝ち取り、、陸山会事件で強制起訴された小沢一郎氏、ロス銃撃事件などで弁護人を務め、無罪判決を勝ち取ってきた「異名」通りの弁護士。小沢一郎氏の顧問弁護士でもある。
ゴーン被告の弁護士・弘中惇一郎弁護士「まだ始まったばかりなので、余り大胆な事は言えませんけども、私はこれは無罪がとれておかしくないのではと思っています。私も73歳になりましたけど、まだカミソリの切れ味があるかどうか、試してみたいと思います」と語る。
https://youtu.be/EuP2oNOJUy4
弘中弁護士は「まったく新しい発想、意見で進めていきたい」とした上で、先週行ったゴーン被告の保釈請求について「外部と情報交換ができなくなるようないろいろな工夫、監視カメラなどを提案した」と説明した。これは裁判所も無視できまい。
2カ月前に、同じ席で会見したのは元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士だったが、2月13日付で突然辞任。辞任の理由は明らかでない。金融商品取引法、会社法違反(特別背任)の罪で起訴した検察側に徹底抗戦するゴーン氏の意向で弘中氏が「登板」することに。
外国メディアの多い会見場でいくつか印象に残るやりとりがあった。
「今回の事件はほとんどが10年以上前の話で日産も当時から知っていたことばかりだ。なぜ今になって検察に届けたのか大変奇妙な感じがする」「このような事件が起きれば海外から優れた経営者が日本に来なくなると米紙が報じている」「日本の社会のためにもできるだけ早く無罪を明らかにして信用を取り戻す必要がある」。新布陣で臨む弘中氏は弁護人としての立場を明確に語った。
4日前の2月28日にゴーン氏の保釈請求をしたことにも言及。「(保釈が認められれば)外部との情報交換を制約するため、コンピューターや監視カメラを使った」と、具体的な対応を取ると裁判所に示したことも明らかにした。東京拘置所で100日以上勾留が続くゴーン氏の健康状態は「元気を維持している」と述べた。
異名の無罪請負人が語る事とは?
ゴーン被告は昨年11月19日に逮捕・勾留されている。
最初に金融商品取引法違反容疑で逮捕されてから、すでに勾留は100日を超えた。
これまでに起訴された内容は
- 2008年のリーマンショックの影響で新生銀行と私的に契約、投資したデリバティブ取引で生じた約18億5千万円の評価損を日産に付け替えた
- 2011年3月期~18年3月期の自分の役員報酬を過少に記載した有価証券報告書を提出した
- 投資に関する信用保証で協力したサウジアラビア人実業家側に子会社「中東日産」から約12億8400万円を入金させて日産に損害を与えた、とされている。
東京地検特捜部は日産やゴーン被告と、オマーン、レバノンにある販売代理店との間の巨額の借り入れや融資への捜査を続けている。しかし、中東にまで広がる膨大な資金の流れ、その不透明さにどこまで日本の捜査が及ぶか、注目されている。
会見で弘中氏に質問した記者の大半は欧米メディアだった。
「日産という会社、それに絡んでいるかもしれない経産省。このあたりとどのようにリンクしているか注意している」「鈴木宗男さんの事件で佐藤優さんが『国策捜査』という言葉で説明したが、時代の変わり目、ある大きな政策の転換期にあるときに何かこれまでの社会を代表した人がひどく叩かれるということがあると思う」。事件のバックグラウンドや「歴史性」「社会性」という言葉を使ったことへの質問に弘中氏は具体的な事例で語ろうとしていた。
「私が弁護士になった50年前の時には、勾留はこんなに長くなかった。起訴されればすぐに釈放されることが当たり前だった。(しかし)段々が長くなって、鈴木宗男さんは400数十日、無罪になった村木厚子さんでも160日ぐらい勾留されている。いま、やっと裁判所も少し反省して以前より保釈が出されやすくなったというのが潮流」。日本の司法では勾留期間が長いと海外で批判されていることへの見解を問われ、自らの経験をベースに答えた。
司法担当の日本人記者なら通常尋ねない視点だが、欧米メディアの中には刑事被告人のさまざまな権利を保障する日本国憲法(第37条)に検察側が違反していないか、違憲であることを争点にしないかとの質問もあった。
「検察官の取り調べの時に弁護士が立ち会うことは認められていない。弁護人が立ち会う(取り調べの)法律、規則がない」と弘中氏は日本と海外との司法制度の〝違い〟を説明。別の海外メデイアから「検察の動きは合法的だけど、憲法には違反しているのか」と重ねて尋ねられ、弘中氏が「違憲であると主張する局面はある、憲法も視野に入れて弁護活動する」と答える場面もあった。
一方、今年1月8日、東京地裁で行われたゴーン被告の勾留理由手続きで、被告本人が法廷に腰なわ、スリッパ履きで現れたことが衝撃だったと感想を語った外国人記者がいた。日本では被告が非人道的な扱いを受ける印象を強く持ち、質問したかのような印象。
これに対して、ロス銃撃事件で日本の最高裁で無罪になった三浦和義元社長(故人)が米自治領サイパンで身柄を拘束された時に、赤い服を着せられ、足かせもあったのではないかと弘中氏が答えたことも印象的だった。
ゴーン被告家族の弁護団は勾留巡り国連に人権侵害を訴える
[パリ 4日 ロイター] 日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告の家族の弁護団は、勾留が長期化する中で同被告の基本的人権が侵害されていることを訴える文書を国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に提出した。弁護士が4日、明らかにした。
26ページにわたる文書では、ゴーン被告が逮捕された状況や勾留中の環境などについて弁護団の懸念が記されており、弁護士は「基本的人権の侵害」を明らかにしたと述べた。
これほど、日米欧の司法の在り方が問われている事件は、近年にない。
日本も海外の司法制度から学ばねばならない点が数多くある。
やたら、勾留を長くして自白を促す様な地検の遣り方は、もはや世界では通用しないという事だ。
日本の司法当局も素直に、この違いを自覚しなければならない。
追 記
東京地裁は5日、ゴーン被告の保釈を認めた。保釈金の額は10億円。
東京地検は、当然準抗告するとみられる。→準抗告は棄却する決定がなされた。
これでお金さえ準備出来れば、すぐ保釈される・・・様々な条件こそ課されているが。
弘中 惇一郎弁護士は、前の大鶴基成弁護士の様なやり方はしない。
東京地検の先輩・後輩の戦いなどといった低次元レベルの戦いには絶対にならない。
根っからの人権派の弁護士だ。ヤメ検などではない。
東京地検にとって相当手強い相手になるはずだ。
裁判所にとっても、思ってもいない見解の答弁書が出されるはずだ。慌てるぞ。
特捜部事件の勾留延長請求が却下された例は極めて異例という。
今回は海外からの長期勾留批判に裁判所が屈した感じだ。
面白くなってきた。
裁判は絶対、傍聴しに行こうと思っている。