フリーエージェント(FA)権を行使するための申請期間が始まった5日、西武炭谷銀仁朗捕手(31)がFA権を行使する意思を固めたことが分かった。近日中に申請手続きを行う。宣言残留も選択肢に残しているが、プロ13年目を終え、新たな環境で勝負したい希望も持っている。宣言時に備え、正捕手獲得を目指し巨人が調査を続けている。
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長年、西武を支えてきた扇の要が決断した。炭谷は6日、都内で渡辺SD兼編成部長、飯田常務と再び話し合いを持った。既に複数年契約を提示されているが、改めて「どうしても必要な戦力」と伝えられた。球団の評価に深く感謝したが、返答は保留した。他球団の評価も聞いてみたい意思も強く、権利行使を決意し近く申請手続きを行う予定。
西武への愛着は強い。14年に国内FA権を取得したが、行使してこなかった。後輩にも厳しいことを言える兄貴分として、野手だけでなく投手陣も引っ張ってきた。ここまで育ててもらった感謝も強く、宣言残留の選択肢も残しているが、他球団の評価を聞いた上で結論を出すことを決めた。悔いのないプロ野球人生を全うしたい気持ちが、FA宣言へかじを切らせた。
「もうひと勝負したい」というのが最大の理由だ。13年目の今季は出場47試合。100試合を切るのは、オープン戦で左膝を故障したため9月の1試合のみだった10年以来だった。若く、打力のある「森」を正捕手として育てようというチーム方針を炭谷も理解しており、出場機会が減ったこと自体に不満はなかったという。ただ、培ってきた経験を生かし切れなかったのも事実。30歳を超え、現役生活も折り返した。新たな環境に身を置き、正捕手の座をかけて、フラットな立場で勝負したい気持ちも強くなった。
過去7年間は100試合以上出場したが、2018年シーズンは森選手、岡田選手の台頭があって47試合に激減した。西武は優勝したわけだから、来シーズンも森、岡田選手を中心に回していくはず。来季以降も「横一線の競争」は望めず、「そこの判断ですよね」と語る炭谷選手。森選手の控えを受け入れるか、正捕手争いのできる環境に移籍するかの決断を迫られている。
西武辻発彦監督(60)は、FA権を保有する炭谷と浅村の残留を願っている。埼玉・所沢の西武鉄道本社で後藤オーナーにシーズン終了報告を行った後、「困るよ。ぜひ、残って欲しい」とラブコールを送った。球団は既に複数年の残留条件を提示。同監督は「彼らが頑張って取った権利。しっかり、うちの球団と話をして、他球団とも話す機会があるだろう。本人たちが決めること」としながらも、主力流出を懸念していた。
巨人阿部慎之助内野手(39)が来季から4年ぶりに捕手に復帰することが4日、分かった。16年以降は捕手での出場がなく一塁手を務めてきたが、かつての名捕手が原点回帰をする。原監督が推奨する「少年時代のような気持ち」を思い起こす意味でも、自身の代名詞ともいえる「扇の要」への復帰を決断した。勝負強さと存在感が光る打撃は健在である。プロ19年目はキャッチャー阿部として5年ぶりのリーグ優勝に挑む。
阿部が原点に戻る。この日までに原監督とも話し合いを行い、来季から捕手に復帰することが決まった。近年は一塁手としてプレーしてきたが「やっぱり自分は捕手かなと思う。あのポジションには特別な愛着もある」と口にすることもあった。直訴を同監督に快諾してもらい、「捕手」として再び勝負の舞台に立つ。1~2年での引退も覚悟の上だ。後悔したくないとの思いで、捕手に戻ったとのこと。
捕手か打撃か。近年のテーマだった。13年、長年にわたってファウルチップを受け続けたことで首痛を発症した。肩にまで影響し、14年オフに一塁手に転向した。だが15年の開幕直後、故障者続出のチーム事情で捕手に復帰した。16年は捕手登録に戻ったが事実上、一塁手で出場を重ねた。4度のゴールデングラブ賞、9度のベストナインはいずれも捕手で受賞した。打撃では昨季、通算2000安打に到達した。代打としての出番が多かった今季も90試合に出場し11本塁打をマークし、プロ入りから18年連続2ケタ本塁打の球団記録を樹立。王、長嶋以来となる通算400号にも、後1本と王手をかけた。
40歳を迎える来季は体調面の不安も懸念される。当然、正捕手としてマスクをかぶり続けることは困難だが、ここまでの経験を後輩捕手や投手陣に伝えることはチームの底上げに直結する。自身が捕手を離れた後は小林が後継として主戦を務めたが、チームは4年連続で優勝を逃した。大城、宇佐見に加え、今オフのFA市場で調査に乗り出している西武炭谷も含め、セ・リーグ打者の特徴などを伝授することも可能となる。第3次「原ジャイアンツ」が提唱している「少年野球のような気持ちで、のびのびと」のスローガンは、阿部の捕手復帰にも体現されている。
阿部は、最近、ベンチから戦況を見守ることが多くなった。その際、「ここでマウンドに行ってああしたい、こう言いたいというのは常に思っていた」。小林や大城、宇佐見に持論を押しつけても重荷になる。そう考えるとやりきれなさも残った。「捕手になれば言えることも出てくる。いい投手はたくさんいる。早く何とかしない」との思いからだ。由伸前監督の3年間は捕手を一切できなかった。若手投手が伸び悩んだ一因には「阿部不在」もあったはずだ。
また、炭谷選手獲得の背景には原監督に、小林選手が信頼されていないという噂があるらしい。
「秋のキャンプの主将? あっていいね.参加最年長は小林? 去年は小林だったの? え~、小林~?」「(小林の肩は)甲斐と遜色ない。ちょっと打てばすごい捕手になる。最低2割4分、本心を言えば2割5分、持っているものはいい。もっと打てるはず」とコメントしている。守備面を褒めているが、肩以外のことを褒めていない。むしろ肩以外になにも信頼していないともいえる。どのカウント・イニングでも同じようなリードをしているから、広島にやられっぱなしだったのだ。
炭谷は、絶対的な捕手のいない巨人へ移籍して競争していきたいと思うはず。巨人の捕手といえば小林選手と思うかもしれないが、過去4年間リーグ優勝できていない。ノーヒットノーランの投手(山口俊、菅野智之)2人を輩出した小林選手だが、そのリードの仕方は単調との酷評が絶えない。他の投手の場合、その投手の特徴を引き出せていない。経験豊富な炭谷が、小林選手の競争相手という意味では適任かもしれない。捕手大城の打撃を生かしたいなら、取り敢えず1塁主にしておけばいい。
炭谷選手も打撃は振るわないが、リード面や経験面では、巨人の小林選手より遥かに優っている。
まさに、正捕手に相応しい。
4年間も優勝から遠ざかっているのには首脳陣だけの問題ではないと原監督は考えているらしい。捕手がしっかりしていれば無駄な失点を防げたというシーンはたくさんあったと思っている。仮に炭谷選手を獲得して優勝争いに貢献できたら、原監督の功績は非常に大きいものとなるから、炭谷捕手への獲得は本気度の可能性がかなり高い。
阿部捕手の選手生活は、せいぜい持っても1~2年のはず!炭谷捕手獲得への期待度は増すばかりだ。
後は、炭谷選手の決断を待つだけだが、巨人は黙って待ってはいないだろう。陰に陽に炭谷選手に働きかけるはずだ。