21日の大相撲名古屋場所で、西関脇の御嶽海(みたけうみ:25):本名・大同久司が、長野県出身力士としては初めて現行の優勝制度の下で優勝を果たした。御嶽海が生まれ育った木曽地方は2014年の御嶽山噴火後、観光業低迷に苦しんでおり、久しぶりの明るいニュースに地元は沸きに沸いているという。
今日は、この御嶽海とその大応援団にスポットを当ててみた。
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御嶽海の出身地の上松(あげまつ)町は山深い木曽地方の人口約4500人の小さな小さな町。町から望む御嶽山と所属する出羽の海部屋がしこ名の由来だ。
商店街の至る所に「郷土の星 めざせ横綱」とポスターやのぼり旗が掲げられているらしい。
名古屋場所は三横綱が休場し、新大関の栃ノ心も途中休場。そして琴奨菊も!
看板力士が次々と休場し、当初は今一つ盛り上がりに欠けた場所に見えた。
しかし、最近は「スー女」なる女性ファンが増えて相撲人気は不祥事が続いても一向に衰える気配がない。
そんな中から御嶽海の名が優勝候補に急上昇!
御嶽海の人気もさることながら、その大応援団が今場所、相撲ファンの注目を浴びている。
愛知県に隣接する長野県。連日、地元から応援団が駆けつける。
向正面中央部の上下ます席に約10段に分かれて総結集する。
御嶽海の「しこ名入りのタオル」を広げて、会場を埋め尽くす。
そして、大声援を送る。
人口、僅か4500人の田舎町から、よくぞこれほどというまでの人数が連日バスツアーを組んで会場にやって来る。
これはTVの中継画面を見ているだけで一目瞭然!
まるでどこかのスターのライブ会場の様になる。
初めてこれを目にした人は「何事が起こったんだ?」と驚くのだが、TVの中継は慣れたもので、アナウンサーは淡々と「御嶽海への長野県からの応援団が今日も来ていますね」と解説する。
この奇妙な落ち着いたコントラストが又面白い。
長野県では、元幕内の大鷲が引退した1978年以来、47都道府県で最も長い37年間、関取が不在だったという。
地元からは江戸時代の「雷電」以来となる大関昇進の期待は膨らむ一方。
地元の人気が如何にすごいかは、県外の人にはあまり想像が付くまい。
売店によるとタオルの「売り上げ番付」ではすでに「横綱」級だという。
御嶽海は2015年3月場所にデビューして勝ち越し。
翌5月場所には十両(関取)に上がるとんとん拍子の出世で、小さな町は突如、誕生した大相撲のスターに、沸きに沸いているのだ。
「関脇」の御嶽海!1992年12月25日(クリスマス!)生まれの25歳。
フィリピン出身のお母さんマルガリータさん似のベビーフェイスで明るい性格。 イケメンとはちょっと言い難いが、ニックネームは、みーたん。
ニックネームからも分かる様に皆に愛される優しい性格の持ち主なのだ。
しかし、実力は東洋大学時代に学生チャンピオン&アマチュア横綱に輝いている。実力はすでに折り紙付きなのだ!
大相撲の世界では、相撲ファンがそれぞれ地元出身の力士を応援することはよくある。
しかし、御嶽海を応援する長野県民のパワーが並はずれてすごい!
桁外れとしかいいようがないのだ!
どうしてここまで応援するのか?
そして、御嶽海!涙の初賜杯!
優勝までは「御嶽海の勝ち負け」が町民の挨拶代わりの言葉だったという。
町民の一人はかく言う。「上松は山ん中も中、小さな町で、車で町を行こうものなら端から端まで10分もかからんで、あとは山、山、山。人口も4500人ぐらいしかおらんしな。全国一クラス、全日本クラスのスポーツ選手が出るようなことはないし、過去に大物言うたら島崎藤村(旧木曽・馬篭出身の明治の作家)ぐらいしかおりゃせん。そんなところに毎日スポットライトを浴びる関取が誕生したら、そりゃ町をあげて応援するのはあたりまえだで。
『上松元気会』という町おこしの会のみんなで、御嶽海を応援しちょる。
会員は500人以上おりますわ。
場所ごとに地元の後援会は2~3回バスツアーを募集して、大勢で行きよるで」
確かに長野県民は昔から地元愛が強い。
急峻な山の多い長野県という土地柄で、特に、強い連帯感が芽生える県民性ゆえか、そこに降って沸いたかのような「御嶽海」人気!
期待の度合いも分かろうというものだ。
地元、上松町の後援会500人!そして、長野県人会!
全国に散らばる長野県人会!
その数何千人?いや、何万人?
これが連携を取り、隊列組んでバスツアーで交互にやって来る。
大相撲人気はイやが上にも盛り上がろうというものだ!
今までは、声援を送りたくとも、送れる程の選手を輩出出来なかった口惜しさというか、その反動が一気に長野県民全体に噴き出してきた感じがする。
大関昇進の目安は「三役で直近3場所33勝」とされる。
御嶽海は先場所に小結で9勝、今場所で既に13勝を挙げている。
千秋楽は、惜しくも豊山に逆転の掛け投げに敗れてしまった。
しかし八、角理事長は今場所、3横綱1大関が休場したことを踏まえ、「来場所はそういうことになると思う」と述べている。
9月の秋場所は大関昇進がかかる場所になると明言したことになる。
今までは、白鵬、稀勢の里の存在が優勝への大きな壁になっていた。
しかし、去年の名古屋場所では10連勝中の白鵬を寄り切りで破っている。
真っ向勝負で堂々と勝っている。
大殊勲賞ものだ。
稀勢の里には、もう往年の力は期待できない。
御嶽海の勢いをとうてい阻止できる力があるとは思えない。
新旧交代の時期が間違いなく来ているのだ。
後は、下への取りこぼしをなくすだけだ。
高安、玉鷲、正代も侮れない。
高安以外は次の大関候補だ!
しかし、御嶽海が次の大関候補の一番手になった。
その中でも御嶽海はもう一つ上を狙えるのではないか?
そう、「横綱」だ!
今まではトントン拍子で出世してきた。
よほどの怪我や病気にでも見舞われない限り、上を狙える逸材だ。
幸運を祈るだけだ。
長野県民の期待度はますます高まり、冷める事はまずあるまい。
大応援団も当分、大相撲を盛り上げてくれる事だろう。