明日、2月17日(日)午後9時から放送予定のBS朝日・「命懸けの猟師食堂」に注目。
食べ物を扱う番組は数多いが、この番組には驚かされそうだ。流行のジビエ料理がテーマなのだが、食材となるシカやイノシシの捕獲と調理方法が凄過ぎるようなのだ。一見の価値がありそう。
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ジビエとは野ウサギ、シカ、イノシシなど狩猟で捕獲された食肉のこと。狩猟の盛んなヨーロッパではジビエ料理が食文化として育まれてきたが、最近日本でもブームとなり、全国各地にジビエを謳った料理店が増えている。
そんなブームとは無縁のジビエ料理人が割烹「竹染(ちくせん)」(静岡県浜松市天竜区)のご主人・片桐邦雄さん(67)。ジビエ料理を看板に掲げ45年。供される料理は猪鍋や鹿肉の刺し身など取り立てて凝った料理ではないが、素材そのものの良さが評判で全国各地からお客さんが訪れているらしい。
片桐邦雄さんは45年にも及ぶ凄腕の猟師。このジビエ料理人が驚きの狩りを見せる。
一人で地図もない山道に分け入り、獣道を探し出し「わな」を仕掛ける。
銃は使わず、相手が大きなイノシシでも格闘して手足を縛り、生け捕りにする。
まさに命懸けで、自ら営む「冬の猟師食堂」を維持するためである。
獣の肉は殺された瞬間から血が回って臭うかららしい。
店に持ち帰ってからの解体方法も独自だが、「おいしく食べるため」にすることと獲物の苦痛を少なくすることは両立するという。
その一部始終をカメラが記録する。
取材班には、アフリカの先住民族に入り込んで写真を撮る、タフな女性写真家のヨシダナギが同行。
解体したシカの血を生で飲んで「なめらかで薄い塩のスープみたい」と言う。
多くの店で出すイノシシ鍋は臭みを消すために「みそ仕立て」にするが、片桐さんの店は塩味のみ。命を懸けて捕獲したからこその味といえるらしい。
『命を食べるとはどういうことか』との“哲学”を問いつつ『おいしい物』を追及する見事な二刀流の番組に仕立て上がった様である。
料理に使う食材のほとんどは、片桐さんが自ら調達する。春は天竜川に船を出し、アユ・ナマズ・ウナギを。秋冬は野山を巡り、シカやイノシシを捕える。
片桐さんの信条は、生きたまま捕獲すること。鉄砲で殺傷するのではなく、手作りの罠を仕掛け、素手で生け捕る。とりわけイノシシとの格闘は命懸け。
「自然の命を頂く限り、最も美味しい食材にしないと申し訳ない」という考えのもと、捕獲から解体、調理までの工程のすべてを自分でこなす。
特に、秋から冬にかけての狩猟期間中、日々、片桐邦雄さんは100㎞近く野山を巡るという。シカやイノシシの気配を落ち葉や泥の痕跡から探り、「ウツ」と呼ぶ獣道に罠を仕掛け、ひたすら野生のけものと対決する毎日が続く。
45年に及ぶ罠師の経験は、片桐さんに研ぎ澄まされた感性とストイックな生活を与えた。感覚が研ぎ澄まされた野生の獣は、「ウツ」の異変や罠を一瞬で見抜く。
その獣と対峙するためには、己の気配を消す。酒やタバコはやらず、整髪料やクリームはもとより入浴剤の使用も御法度。仕事着はシーズン中、一度も洗わず、罠には餌を撒かず。餌を食べた瞬間から野生は「家畜」になると考えるから。
イノシシは、成獣になると80㎏以上に及ぶ。罠にかかり前足が拘束されていても飛びついたり暴れたりするため、捕獲は命がけの戦いとなる。まず走力や踏ん張りを無くし、視界をテープで塞ぐ。
銃を使わず罠猟で生け捕りにするのも、捕えた獲物に目隠しをして恐怖心を和らげるのも、すべては大事な命をより良い状態で頂くためなのである。
捕えた獲物を解体するときは、片桐さんが「罠師」から「料理人」に変わるときでもある。獲物のストレスを最小限にするため、鑓(やり)の一突きで命を絶ち、食材に変えてゆく。
けもの肉は命を絶たれた瞬間から酸化が始まり腐敗の道を辿る。素早く血抜きをし、全ての部位を処理することで「余すことなく美味しく食すること」ができる。
これこそが、獲物への最大の感謝だと片桐さんは信じている。 番組は、自然への敬意と鮮やかな技、ジビエ料理の極意に迫る。
一人野山に入り、けものと対等な視線で命をやりとりする片桐さんの生き方が、都市で暮らす私たちが忘れかけた「いただきます」の意味を思い出させてくれるではないか。
片桐さんの店で、イノシシやシカを食するのには予約が必要とのこと。
HPで住所やTELを調べ予約してから出かけた方が間違いない様だ。