サウジアラムコは17日、12月に予定する新規株式公開(IPO)を売り出し規模と目標価格帯を発表しました。上場すれば最初から調達額も企業価値も最大となるのは分かり切っていました。ただ、アラムコの企業価値は1.6兆~1.7兆(約180兆円超え)となる見通しで、これまでムハンマド皇太子が主張してきた「2兆ドル」には届かないのですが、メンツにこだわってきた実力者が企業価値を低く認めた上でも上場する真の狙いは何なのでしょうか?間違いなく世界最大の上場企業になるでしょうが、今年度末にまさに最大な恰好の話題を提供してくれそうです。
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「サウジアラムコ」はサウジアラビア王国の国営石油会社。
サウジアラビア国営石油Saudi Arabian Oil Companyの通称。
「アラムコ」とはアラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(Arabian American Oil Company)の略称。
国営石油会社の略称に他国である「アメリカ」の名称を残していることに特徴があります。
本社はダハラーン(サウジアラビア東部の都市、ペルシャ湾に面する)です。(Wikipediaより)
事業内容 | 石油・天然ガスの探査、開発および生産 関連するパイプライン、輸送および加工業務 原油、石油および化学品の供給や取引、精製、販売および輸送 |
代表者 | ヤセル・ルマイヤン(英語版)会長 アミーン・H・ナーセル(英語版)社長兼CEO |
売上高 | 3559億ドル(2018年) |
純利益 | 1111億ドル(2018年) |
従業員数 | 5万5,000人(2016年) |
主要株主 | サウジアラビア政府 100% |
(Wikipediaより)
今回1位の企業は毎年おなじみのアメリカにある世界最大のスーパーマーケット「ウォルマート」で、売上高は約5,003億ドル(約55兆円)。 2位に国家電網(ステートグリッド)、3位に中国石油化工集団(シノペック)、4位に中国石油天然気集団と、中国企業が続く。 前年も上位4社は順位が同じで変動がないとのこと。
日本企業で1位はトヨタ自動車で、世界では6位、売上高は約2,651億ドル(約29兆円)だった。 自動車業界ではトヨタは世界トップで、2位のフォルクスワーゲンにわずかだが売上が上回っています。 韓国で1位はサムスン電子で、全体で12位にランクイン。
コンピュータやインターネット関連では、Appleがトップで全体で11位。 その他、Amazon.comが18位、Googleの持株会社のAlphabetが52位、Microsoftが71位などとなっています。 上位の企業では、石油、自動車、金融、ヘルスケアなどの業種が目立つ。 (出典:フォーチュンの大企業番付 Global 500 2018年版より)
サウジアラムコは原油埋蔵量、生産量、輸出量とも世界最大の規模を誇りますが、最大といってもどれほどのものか、良く分かりません。自分にはピンとこないのです。凄すぎて・・・。売上高は現在、世界何位なのでしょうか?
上場すれば間違いなく10位以内に入ってくることでしょう。
比較すると、上場企業で石油メジャー最大のエクソン・モービル(売上高世界9位)の10倍超となる2500億バレル以上の確認埋蔵量があるとされています。これがどれ位の規模なのか、数字で示されてもいま一です。
このサウジアラムコが上場となれば、そのインパクトは間違いなく非常に大きなものとなるでしょう。
サウジアラビアの石油開発は1933年、米国の国際石油資本スタンダード・オイル・オブ・カルフォルニア(通称ソーカル、SoCal。現:シャエブロン)の子会社・カリフォルニア・アラビアン・スタンダード・オイル・カンパニー (通称カソック、CASOC)がサウジアラビアのイブン・サウド国王との合意書に調印し、同国の石油利権を獲得。
1936年、カソックは、米国のテキサコ(現:シェブロン)と50%ずつ株式を保有する合弁会社になり、1938年3月、ダーランで石油を掘り当てます。(ダンマン油田)。
1944年、カソックは社名をアラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー(通称アラムコ)に変更。
1960年のOPEC結成を契機に、1960–70年代には産油国で石油会社を国有化する動きが進んだが、サウジアラビア政府は急激な完全国有化政策を取らなかった。
1973年10月、第四次中東戦争。
同年12月、政府の25%経営参加に合意する「リヤド協定」が成立。
この比率はしだいに引き上げられ,1988年にアラムコは完全国有化され,国営石油会社サウジアラムコを設立。
サウジアラムコの主な事業内容は、石油・ガスの探鉱、開発、生産、販売など。
純利益が1111億ドル!→単純に米アップルの倍!凄すぎます。
サウジアラムコ上場の背景には原油価格の下落があるといわれています。
サウジアラビアは石油に多く依存し、原油市場に対する影響力もあります。
原油価格は近年上昇傾向にあり、2017年末からは1バレル60ドル台となっていますが・・・。
原油価格の低落が続いていた2016年1月には1バレル27ドルと2009年2月の水準を下回り、2004年来の水準まで低落しました。
原油価格下落の影響による産油国のファンドの株式市場からの資金引き上げにより株価も下落傾向にあるといわれています。
原油価格が持ち直し傾向にあるとはいえ、このまま原油安が続けば、サウジアラビアの財政は大赤字が続くことになります。
また、サウジアラビアは隣国であるイエメンへの軍事介入も行い、その戦費が膨らんでいますし、イラン敵視を鮮明にし対立を深めています。
原油安と戦費で財政は火の車で、5年続きの大赤字です。その解決策がサウジアラムコの上場ということです。
この上場により現金を手に入れて、財政赤字を減らし、財政改革を進めることになります。
財政改革は、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が中心になり打ち出された経済改革計画『ビジョン2030』で示されています。
株式の2.5%を国内で売り出し、最大で256億ドル(約2.8兆円)を調達する計画。
2014年に中国「アリババグループ」が調達した250億ドルを超える「史上最大のIPO」を目指しています。
欧米でダメなら、まず国内で王族などを中心に、かなり脅迫的な手法で、株式を強引に押し付け売りつけるはずです。そして、
調達した資金力は、計画通りにムハンマド皇太子が旗振り役である石油に頼らない「サウジの改革」の資金とすることでしょう。
アラムコが設定した目標価格は30~32サウジリアル(約8~8.53ドル)。
発行済み株式数「2,000億株」をかけると、企業価値は1.6兆~1.7兆と、時価総額1兆ドル超えの米国アップルやマイクロソフトを上回り、世界最大となる見通し。
世界最大の石油会社アラムコは18年に米アップルの倍近い1111億ドルの純利益を上げています。
しかし、原油価格の低迷や中東の地政学的リスクを背景に、市場ではアラムコの価値に厳しい見方も根強いのです。
つい最近の石油施設への攻撃がそれを物語っています。
9月14日に発生したサウジアラビアの石油施設攻撃には、合わせて20機以上の無人航空機と巡航ミサイルが使用されたもよう。米軍情報筋によると、巡航ミサイルも使用されたとのこと。サウジアラビアへのテロ攻撃を続けるイエメンの反政府武装勢力(フーシ)が犯行声明を出したが、サウジアラビアが大金を投じて整備してきたアメリカ製防空システムを突破し、多数の目標の攻撃に成功した手並みから、アメリカ側は「いくらフーシのドローン戦力や巡航ミサイル戦力が強化されているとはいえ、イランが直接関与しなければ、このような攻撃はできない」と考えています。(軍事社会学者・北村淳)
調達資金は、インフラ整備や教育資金にあてるほか、政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が内外の市場に投資してリターンを将来世代のために活用する予定。
ちなみに、PIFはソフトバンクグループが創設した「ビジョン・ファンド」に出資しています。アラムコは12月5日に最終的な売り出し価格を発表しますが、動向に世界的な注目が集まっています。もし、この上場がうまくゆかずダメになったら、ソフトバンクも吹っ飛ぶことでしょう。
サウジアラビアの経済や財政は豊富な石油資源がもたらす収支に大きく依存してきました。
しかし、21世紀半ばに世界の石油需要はピークを迎える見通し。
若者の雇用を生み出すのは急務であり、実力者ムハンマド皇太子が「ビジョン2030」と名付けた改革プランを提示し、民間部門の発展や社会の近代化を推し進めると宣言。
しかし、皇太子の性急な政治手法や強権的な外交姿勢にはかなり懸念も向けられています。
2018年10月に政府批判の著名記者(ジャマル・カショギ)がトルコで殺害された事件では関与を疑われています。
国際社会の反対を押し切りイエメン内線に介入し、隣国カタールに断行を突きつけ、イラン敵視を鮮明に打ち出し対立を深めています。
常に危うさが漂っているのです。
サウジアラビアは世界最大の石油輸出国であり、アラブ世界のリーダーです。
イスラム教の二大聖地(メッカ、メディナ)を抱えています。
他のアラブ諸国はサウジの改革を手本と位置付けていますし、「サウジ改革」の成否はサウジ一国だけにとどまらない影響が極めて大なのですが・・・。
サウジアラビアは4日、アラムコの株式上場を承認。
同社が世界最大の上場企業になるのを前に、環境運動家はこのIPOに参入すれば気候変動の悪化に加担することになると主張。
NGO活動家のアダム・マクギボンは以下のようにNewsweekで厳しい意見を語っています。
「アラムコへの投資は世界最大の環境汚染企業に巨額の資金を注入するようなもの。埋蔵されている石油と天然ガスをアラムコが全て燃やせば、112ギガトンの二酸化炭素が出る。それはパリ協定の枠内で世界が排出し得る二酸化炭素の約3分の1だ」と。
112ギガトンの二酸化炭素!・・・なんだか凄すぎてピンときません。
地球規模で温暖化が進み、日本でもドでかい台風が次々と来て酷い被害が出ています。
サウジアラムコの株など購入することは環境悪化に加担する悪行・愚行と言いたいのでしょうが・・・。
IPOに参入する大手国際銀行は、自社サイトで気候変動問題への取り組みをアピールしていますが、それは口先だけなのか?と・・・
上場時に飛び交うのは祝辞だけではなさそうなのです。
約180兆円超えの評価額を抱えてスタートする世界最大の上場企業!
サウジアラムコ!
とにかくスケールがデカ過ぎて、今の私の頭では問題点がつかみ切れないのです。