価格.comは今や月間利用者数4000万人、月間ページビューは8億PVを超える人気サービスであり、食べログも6000万人以上の利用者を獲得し、老舗の「ぐるなび」を超えて業界首位に立っている。そんな大企業を設立した槙野氏は28歳でビジネスから撤退し、悠々自適な生活を送っていると噂されていた。しかし、十数年振りにビジネスの世界に戻ってきたという。どんな人物なのか?ネット民が一度は注目する男、槙野氏の素顔に迫りたい。
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1973年7月29日生まれ(45歳)
パソコン部品メーカーメルコ(現バファロー)に就職
そこで、秋葉原の各店を毎日回って価格を調べる仕事を任される。
「消費者は一番安い商品を探し、お店はライバル店の価格を知りたがる。誰もが価格情報を求めているのでは?」とインターネットを通じて価格情報を提供するサイトのコンセプトのヒントを得る。
1年後、その会社を退職。
退職後は、毎日秋葉原の店の部品の値段を自分で調べて載せる「ホームページ」を作成する。
1997年ウエブサイト「¥CORE PRICE¥」を創設
創設後、まもなくサイト名を「¥パソコンの価格が分かるページ¥」に変更。
ヤフーにも取り上げられ、一躍有名サイトに躍り出る。
また、アスキーや日経BP、ソフトバンク、インプレスなどのパソコン雑誌に紹介されたりして、パソコンに詳しい人たちから口コミで広がっていく。
1997年 自分で価格更新の限界を感じ、お店がリアルタイムかつ直接登録出来る同時システムを開発した。
さらに「Windows特設掲示板」を創設し、ユーザー間で意見交換できるコミュニティの場を提供する。
2000年「¥パソコンの価格情報¥」を経て、現在の名称「価格.Com」に変更する。さらに、各比較分野での取り扱いをブランド品やゴルフ用品、携帯電話にまでに広げて行く。
そして、あらゆる製品に紐づいた「クチコミ掲示板」を設置する。
その後、株式会社に組織変更し、社名を「コアプライス」から「カカクコム」へ変更する。
また、同時に初のサービス比較として自動車保険料を比較・一括見積りサービスを開始する。
その後、ブロードバンド、携帯料金プランなどの通信関連まで順次サ-ビスを拡大させる。
2001年 槙野氏は社長の座を2代目に譲る。
この時の年齢はわずか28歳!
槙野氏退職後も会社の勢いは止まらず、東京証券取引所一部昇格、「食べログ.Com」の立上げ、写真共有サイト「PHOTOHIT」の提供など多岐にわたって事業を展開する。
株式会社カカクコムは今や「価格.com」や「食べログ」を運営し、13期連続増益、営業利益率は50%弱を誇る超優良企業に成長している。
槙野氏が働いていた期間は10年に満たない。23歳で起業し、28歳で退いている。僅か5年!
そして、「カカクコム」を売却して得た売却利益は「25億円」と言われている。
贅沢しなければ一生遊んで暮らせる額である。
一般のサラリーマンなどでは到底手に入れられる金額ではない。
その後は、何もせず謂わば悠々自適なニート生活を送っていたらしい。
槙野氏は学生時代から「束縛されない自由」に憧れていたそうだから。
そんな夢の様な生活を送るためには早くから大金を得るしかない。
スポーツ選手になれるような才能も芸能人になれるような才能もない普通の人が起業して、大成功を収めた訳だが、誰にでも出来る事ではない。
彼のアイディア、行動力をみるとやはりただの普通人ではない!
(株)カカクコムの現在の資産価値は時価5000億円を軽く超えているとも言われ、今売却すれば100億円近くの売却益を得たかもしれない。
しかし、彼にはそこまでの執着心はなく、早く自由な生活を手に入れたかったらしい。
<成功の秘訣>
① サラリーマン時代の経験を生かす
② 強い「憧れ」をもつ事~槙野氏は「自由」でした。
2014年に美容室「ALBUM」を創業し、業界に旋風を巻き起こしているらしい。新R25の編集長:渡辺氏からの質問に槙野氏は以下の様に答えている。
渡辺:槙野さん、会社を売却してからは一切メディアに露出してないですよね。こうやってインタビューを受けるのは相当珍しくないですか?
槙野:そうですね。「槙野ははぐれメタルだ」と言われてますから(笑)。
カカクコムを辞めたあとは、一切メディアに出たくないって言ってたんですよ。百害あって一理なしだし、もう僕が目立ってもしょうがないと思ってたんで。渡辺:なぜ今回は受けてくれたんでしょうか?
槙野:今やってる美容室の事業がうまくいきはじめたので、これからは自分が積極的に出ていったほうがプラスになるなと思ったんですよね。
これは、僕が一発屋じゃなかったことを証明する戦いでもありますし。「業界の有吉」を目指してます(笑)。渡辺:なるほど、ちょうどいいタイミングで打診できてよかったです!
槙野氏は経営者になりたいとも、あまり思っていなかったし、束縛されない自由な時間を手にしたら、もう働きたくないなぁと思っていたらしい。
5億円稼いだら、引退すると就職活動の時から宣言していたと言う。
渡辺:当時の起業家のなかでは珍しいタイプだと思います(笑)。
ちなみに、なぜ5億円だったんでしょうか?槙野:当時サラリーマンの生涯賃金が3億円くらいだと言われてたんで、普通の生活をするなら5億円あれば十分だと思ったからですね。
渡辺:結果的に槙野さんが辞めたのはカカクコムが上場する2年くらい前だったと思うんですが、上場させてからとか株を売ろうとは思わなかったんですか?
槙野:いやー、全然思わなかったですね。当時かなり疲れてたんで、早く辞めたかったんですよ。それにさっき言ったように、もともと5億円稼ぐことが起業理由だったんで、それが見えた段階で穐田さんにバトンタッチしました。
槙野氏は2001年12月、カカクコムの出資元であったICPというベンチャーキャピタルの代表だった穐田誉輝さんに経営を引き継ぐ。
穐田さんはカカクコムを上場させた後にクックパッドの代表に就任し、両社を成長に導いた「プロ経営者」!
2017年には女優の菊川怜さんと結婚したことでも話題となっている人物である。
渡辺:そして、ここからが本題です。28歳にして莫大な資産を手にしたあとは、どういう生活を…?
槙野:辞めてすぐに結婚したんですけど、そこからしばらくは嫁さんと一緒に旅行に行ったり、ダイビングしたりしてましたね。土日は外に出たくないので家でレンタルビデオを見て、平日に旅行するみたいな生活でした。
渡辺:死ぬまでに一度だけでいいから、そんな生活してみたいです。
ちなみにですけど、当時は資産運用したりしてましたか?槙野:一応やってましたね。オススメされた金融商品を買うくらいでしたけど。
当時すごい流行ってた『グローバル・ソブリン(※)』っていう投資信託があったんですけど、証券会社の人からとりあえずそれを5億円分買っておきなよと言われたんですよ。※『グローバル・ソブリン』は、三菱UFJ国際投信が運用する投資信託。日本に比べて高い利回りを得られる先進国の国債に分散投資し、毎月一定額の分配金が出ることから、投資ビギナー層にも手の出しやすい入門ファンドとして一世を風靡しました。同商品は、長年にわたって投資信託の純資産高トップの座に君臨。しかし、リーマン・ショック後は勢いを失い、配当金も大幅に引き下げられていく。
槙野:そしたら配当だけで毎月250万円くらい入ってきて、「これはすごいな」と思って追加でもう5億円分買ったんです。何もしなくても毎月500万円の収入があるという(笑)。
渡辺:自由なうえにお金も減らない日々だったということですが、どれくらいそんな生活を続けてたんですか?
槙野:子どもができるまでの2~3年ですかね。嫁さんが動けなくなると、ひとりで遊んでるわけにいかなくなるじゃないですか。
ずっと家にいるので、出産近くなると僕が料理したり、洗濯したりするようになったんです。けっこう器用なんで何でもできるんですよ(笑)。渡辺:そこからは子育て生活に移行したわけですね。
槙野:はい。でも嫁さんには申し訳ないんですけど、だんだんその生活に物足りなさを感じるようになってしまったんですよね。
槙野:で、ちょうどそのときにテレビで『龍馬伝』をやってたんですよ。
それを見てるうちに「男のロマンって何なんだろう」って考えることが増えてきて。少なくとも、今の俺がやってることは違うなと。家族と幸せに暮らしていて悪くないんだけど、何かが足りないというか、命燃やしてないなと。渡辺:それで一念発起して、すぐ仕事を始めたんですか?
槙野:いや、そのあとなんとなく海外に行きたいなと思って、37~38歳くらいでシンガポールに移住しました。そこから2~3年経って子育てがひと段落したタイミングで、嫁さんに「仕事していい? 本格的にやるから」と宣言して、40歳くらいから今の事業を始めたんです。
渡辺:ちなみに、そのとき奥さんはどんな反応を?
槙野:特に反対とかはなかったんですが、半分くらいは日本に行ってるし、はじめはちょっと疑ってたかもしれません。「ホントにこの人仕事してるのかな? 遊んでんじゃないの?」って(笑)。
「最近はちょっとずつ結果が出てきてメディアに取り上げられることも増えて、やっと(ちゃんと仕事してるって)信じてもらえてる気がしますね。」と語っている
渡辺:槙野さんが次に選んだ事業が「美容室」だというのは意外でした。
このビジネスにはどうやってたどり着いたんですか?
槙野:「また何かやりたいな」と思ってからいろんなビジネスモデルを探ってたんですけど、僕がそのなかで一番有望だなと思ったのが、美容室が持ってる顧客のマーケティングデータの活用だったんですよ。
槙野:たとえば美容師って、カラーしたりすると2~3時間接客しますよね? そうするとお客さんの趣味だとか、いろんなことがわかるじゃないですか。
新しい髪型に合った洋服をオススメしたり、車がほしいと言っているお客さんがいたら地域のディーラーにつなぐとか。渡辺:たしかに。美容室が代理店的な機能を持つイメージですかね。
槙野:そうです。いろんなマッチングをサポートできると思ったんですよね。
この「床屋談義をお金にする」というのが僕の起業テーマでした。
ただ、これを実現するためには、まず美容室を増やさないといけない。それで『ALBUM』というサロンをつくりました。渡辺:拝見しました。「最新トレンドヘアーを毎月通える価格で提供する“ファストサロン”」というコンセプトがいいですよね。美容室はどういう戦略で拡大させていったんですか?
槙野:美容室って、ひと昔前だと「駅前に店舗を構えて、ビラを配って集客するビジネスモデル」が主流だったんですよ。ただ、いろいろと業界を研究したら、今は「ホットペーパービューティーを使ったネット集客」と「業務委託の美容師を活用するビジネスモデル」がトレンドだとわかったんです。
渡辺:ネット集客はわかりますが、美容師の業務委託モデルというのは?
槙野:もともとこの業界って、美容師の平均年収がすごい低いじゃないですか。サロンオーナーの搾取が横行していたりして。
渡辺:そのイメージはありますね…。社会保険の加入率もかなり低いと聞いたことがあります。
槙野:ただ、完全歩合給の業務委託モデルが流行することで給料がよくなって、働き盛りの若手スタイリストが一気に動いたんです。加えて、(業務委託モデルには)サロン側もどんどん店舗を拡大していけるというメリットもあります。
渡辺:なるほど。それで『ALBUM』も業務委託モデルで展開しているんですね。
槙野:正確に言うと、『ALBUM』には社員の美容師もいます。
新卒を採用してアシスタントとして育てる従来型と業務委託のいいとこ取りをした、業界では新しいハイブリッド経営をしています。渡辺:『ALBUM』の場合はインスタを武器にサロンを拡大しつつ、中長期では顧客のマーケティングデータの活用やメディアで勝負したいということですよね。
槙野:そうです。ただの美容室じゃない事業をつくってバリュエーションをつけて、(企業価値の)桁を変えたいと思ってます。
ただ、業務委託の美容師も過当競争になってくると、最後はサロンもカッコよさとかブランディングの勝負になるわけです。そこで『ALBUM』が何でうまくいったかというと、インスタなんですよ。
渡辺:なるほど。しかもインスタで人気になれば、美容師の採用だけじゃなくて、お客さんの集客にも効果がありそうですね。
槙野:そうですね。10年前くらいなら美容室は女性誌に営業活動を一生懸命やってたと思うんですけど、『ALBUM』はインスタに強いということで、勝手に名前が挙がるようになりました。
渡辺:インスタはどういう体制で運用しているんでしょうか?
槙野:社員スタイリストはそれぞれの個人アカウントを、広報担当者は『ALBUM』の公式アカウントを運営しています。
毎日ユーザーの反応を彼らにフィードバックしてPDCAを回してたら、ともにすごいフォロワーが増えていったんですよね。
他のサロンってIT化がすごい遅れていて、近代的な経営がほとんどできてないんですよ。僕は異業種から来て、普通にやってただけなんですけど。渡辺:今の時代、インスタに強いサロン=『ALBUM』となれば先行者利益は相当大きそうですね。
槙野:はい。そしてインスタを攻めたら、今度はヘア系動画にポテンシャルがあるって気付いたんです。
渡辺:動画ですか? たしかにSNSでもヘア系のショート動画は人気ですが…
槙野:ウチはその動画の一次生産元なんですよ。だから、美容室がメディアをつくれる可能性があるわけです。
渡辺:なるほど! 美容室なら、動画の制作コストもかなり抑えられますね。
槙野:そうなんです。たとえば普通のメディアがヘアアレンジ動画をつくろうとすると、スタイリスト、モデル、場所のアレンジが必要になってくる。
ウチの場合はそれらが全部不要で、業務のついでに撮影ができますから。渡辺:美容室ってやり方次第で、思っている以上にポテンシャルがあるんですね。いろいろと勉強になりました。ちなみに、今の事業でこの先は株式公開(上場)を目指しているんですか?
槙野:はい。5年以内には上場したいと思ってます。
ただこの業界って、上場してる会社でも時価総額50億円くらいしかないんですよ。夢がなさすぎますよね。渡辺:え、そんなに低いんですか!? 厳しい評価ですね…
槙野:最近だと業務委託モデルでトップを走っていたAguグループが100億円でファンドに買収されたっていうニュースもありましたが、今はもうフリーの美容師も奪い合いになっているので、このモデルも行き詰まりが見えてきています。(Aguグループは)だからこそ売却したんじゃないかなと。
渡辺:『ALBUM』の場合はインスタを武器にサロンを拡大しつつ、中長期では顧客のマーケティングデータの活用やメディアで勝負したいということですよね。
槙野:そうです。ただの美容室じゃない事業をつくってバリュエーションをつけて、(企業価値の)桁を変えたいと思ってます。
槙野氏は事業が拡大したら、経営はまた次の人にバトンタッチする積りらしい。
トップは5年ぐらいで変わった方が良いというのが持論である。資産は段々と増やして行きたい。
30代は何もしなかった自分だが、竜馬伝を見て「国を良くする」というロマンを感じたらしい。
事業を成功させ40代で資産1000億ぐらいを築き、50代で、日本に貢献したいという夢を持ち始めたという。
又、何かを仕出かしてくれそうな期待が持てる人物ではある。